△新涼の星占いの信じたき
句意に新鮮を感じますが、この季節にしては少し歯切れの悪さが気になりました。
中七の「星占いの」を「星占ひを」として、下五に切れを入れてすっきりさせました。
○新涼の星占ひを信じけり
△蝉時雨遠き思い出語りをり
このままでもよいと思いますが「遠き思い出」が第三者に伝わりにくいかも知れませんね。
「蝉時雨」から想像するとどうしても戦争の行きつくのですが如何でしょう。
「蝉時雨」が上五にくると重すぎるような気がしますので下五に据えました。
○戦争の思い出ばかり蝉時雨
△こほろぎを厨に住ませ今日を生き
蟋蟀が厨の隅で鳴いているとは昔を思い出して楽しくなりました。中七の「厨に住ませ」の
措辞も面白いのですが、少し無理と思いますので、「棲みつく厨」と変えてみました。
また下五の「今日を生き」も冗漫になるので「恙なし」では如何でしょうか。
○こほろぎの棲みつく厨恙なし
△故郷の松の一本鰯雲
何かにつけ思い出す松の木なのでしょうか。中七の「松の一本」とした意図がよく解らない
のですが、「一本松や」ではどうでしょう。季語の「鰯雲」も効いてくると思います。
「鰯雲」を「いわし雲」と平仮名にすると故郷のゆったりとした秋の景が大きく見えてきます。
○故郷の一本松やいわし雲
△たまご焼く匂ひやさしき今朝の秋
卵を焼く匂いに秋を知る感覚は鋭いですね。残念ながら「匂ひやさしき」は説明とも取れます
ので、美味しそうな卵の匂いを広げて見ました。
○たまご焼く香の透きとほる今朝の秋
△うすれゆく母の記憶やつくつくし
「うすれゆく母の記憶」としながら母を思う作者の心情が強く伝わって来ます。
「法師蝉」を「つくつくし」と詠んだのもよいですね。その思いを強く表現して見ました。
○つくつくし母の記憶を呼びもどす